大学院では何をするか(修士・博士前期課程編)

学部とは似て非なる実態

文系の大学院に進学すると具体的に何をするのでしょうか。

大学院は基本的に大学の学部を卒業した後に進学するところですので、「学部の延長」のようにイメージされる方もおられるかもしれません。

大学院についてあまり詳しくご存知でない方だと、「高校の延長」、すなわちまだまだ「勉強」をするところと思われる方もおられるかと思います。

私もよく、「勉強熱心でえらいねぇ」と褒められる(?)ことが多々あります。

大学に進学し4年間勉学に励んできた多くの方は、就職活動をして社会人として羽ばたいていきます。

そうした選択肢もあるなか、大学に残る選択をした場合は何をすることになるのでしょうか。

本ページでは、主に修士(博士前期課程)に絞って説明していきます。

それは、学部とは似て非なるものといえます。

修士課程の修了に向けて

学部を卒業したら「学士」という学位が獲得できるように、修士課程を修了した場合は「修士」という学位を獲得することができます。

大学院に進学した方々は、基本的にみなさん修了するための要件を満たすために努力することになります。

それでは、その要件とは具体的にどのようなものでしょうか。

学部を卒業するためには、「必修単位」といった縛りに気を配りながら、4年間で124以上の単位を取得する必要がありました。

また、卒業論文(卒業制作など)の執筆・作成に取り組まれた方も多くおられるでしょう。

基本的な構図は大学院も同様です。

修了に向けてとらなければいけない単位数は決まっていますし、多くの場合修士論文を提出し、その審査に合格することで晴れて修了となります。

ですが、その内実は学部とは大きく異なっています。

まず、必要単位数は、2年間で30単位であるところが多いです。

1年換算すれば、学部が31単位で大学院が15単位ですから、その差は歴然です。

一方、修士論文については当然ながら卒業論文より高いレベルを求められます。

修士修了で研究の世界から離れる方でも、修士論文を著名な学術雑誌に載せることは稀ではありません。

(先生方のご厚情合格ともいうべきレベルのものもみられなくないのですが…)

修士課程での実際の生活

それでは、以上のような修了要件の違いは、院生生活にどのような影響を及ぼすでしょうか。

①授業のコマ数に縛られることがない

まず単純に、とらなければいけない授業は少ないので、その分授業時間に縛られることは極端に減ります。

「全休」という言葉はあまり大学院では聞きませんが、必要最低限の修了要件をとるように履修計画を立ててもだいたい自然と全休はできます。

そのため、自由に使える時間は学部と比べると大幅に増加します。

(すでに3回生までに必要単位をとりきってしまって4回生は卒論だけだった、という方は別です。)

②授業の発表準備に追われる

しかし、大学院の授業の大体は演習形式です。

1コマごとに決まった人数の報告者を立てて、その方が研究報告なり何なりの報告をする形式です。

報告者に立てられると、それに向けての準備が必要になってきます。

授業を複数とっていると、授業ごとに報告枠が割り当てられるので、同時並行的に準備を進めなければいけなかったり。

そうなってくると結構しんどいです。

(武勇伝ですが、私も事情で1ヶ月に8回報告をしたことがありました。)

③修士論文に向けて研究を進めることも必要

自分のところだと、修士で修了が決まっている方に対しては、かなり温情で修士論文の合格が出されることも多々ありましたが、

やはり基本的には、学術雑誌に載せられる、もしくはその一歩手前くらいのレベルの修士論文が求められます。

すると、一夜漬けはもちろんのこと、数ヶ月だけ頑張れば書けるというようなものではありません。

日々の積み重ねの上、2年間の集大成として修士論文があります。

以上をまとめると、必要単位数の関係から見かけ上の自由な時間はかなり増えるが、実際は報告準備なり研究活動なりに割かれる時間も多くなる、となります。

システム上は学部と似たものですが、そのなかでの実際の生活はだいぶ変わってくるのではないかと思います。

大学院では研究をするだけか

それでは、大学は研究をするだけなのでしょうか。

そうなると、わざわざ2年間就職を遅らせて文系学問の研究を深めることにどのような意味があるのでしょうか。

この点はまた別にまとめようと思いますが、実は大学院進学は、専門的な研究を深める以外にもいろいろできる制度が整っていたりします。

①教養科目の設定

大学によるかもしれませんが、うちの大学には教養科目が設定されていて、修了要件単位にもわずかではありますが含まれていたりします。

どのような科目が設定されているのかというと、AIを活用したテキストマイニングやデジタル・ヒューマニティーズの手法、プログラミング言語、博物館・教員の実践研究、といったものがあります。

もちろん、人文学の各専門分野について、教養レベルにまで平易にした講義も開かれています。

これらは専門分野を深めるというよりは、視野を広げる効能のある科目たちです。

博物館学芸員や教員など、指導的立場に立つとすればこうした視野の広さは必ずや生きてくるはずです。

もちろん、専門とは関係のない職につくとしても、社会に対する眼差しを深めておくことは、現代社会を生き抜くための1つの糧となってくるはずです。

②資格の取得

学部生のときと変わりはないかもしれませんが、様々な資格の獲得にチャレンジすることも可能でしょう。

演習講義の報告準備が大変とはいえ、さすがに社会人の方と比べると自由な時間は多いです。

その時間を活用する一つの選択肢として、ということですね。

例えば語学。

TOEFLといった語学検定を受けてみたり、英語で開講される授業に出てみたり。

また、教員や学芸員、司書といった資格も獲得できます(要件となる単位を獲得することは少しハードーかもしれませんが)。

すでに学部で教員免許を獲得されている方は、必要単位を満たせば専修免許へのグレードアップもできます。

まとめ

以上、主に博士前期課程・修士課程を対象に、進学後は何をするのか/できるのかについてまとめてきました。

基本的には、修了要件を満たすために必要な単位の獲得と修士論文の提出に向けての研究が主となってきます。

一方、学生身分を活かして、教養の幅を広げてみたり資格取得に動いてみたり、将来の人生を豊かにすることもできます。

文系学問は一般の人々にとってみれば、具体的にどのような実益をもたらしてくれるのかがわかりづらいところがありますので、大学院に進学することで何がどうなるのかがイメージしづらいと思います。

もちろん、文系学問をさらに深めることがまったく意味のないことではありません(また別の機会でお話しします)。

ですが、それ以外にも院進のメリットがあるということをイメージしていただければ、文系の大学院に進学する敷居も多少下がるのではないでしょうか。

ひとまず本記事はこのあたりで締めたいと思います。

また何かご質問などございましたら、お問い合わせフォームからご連絡ください。

コメント